時代遅れの捕鯨禁止がアメリカを混乱させている

("Bloomberg View"(2014年2月8日)からの訳。05-Apr-2014)
原題: "Outdated Whaling Ban Befuddles U.S."

Lisa Beyer, an editorial writer on international affairs



アメリカの内務省が今週、アイスランドが国際的な反捕鯨の努力を弱体化していると認定したのは、アイスランドが公然と捕鯨を行っていることを考えると、特に驚くことではない。 疑問が残るのは認定に伴ってオバマ大統領が加えるかもしれない制裁措置である。 アメリカの法律では大統領はNATOの同盟国であるアイスランドに経済制裁を加えることはできる。 もっとありそうなのは、彼が2011年にくだした命令を繰り返すこと、すなわち政府がアイスランドに対してアメリカの捕鯨観を強調するか、あるいは冷遇することなど、効果がありそうな方を行うことである。

しかし、どちらも効果はないであろう。 なぜならば、アメリカが擁護するモラトリアムは、商業捕鯨を禁止することが鯨を絶滅から守るのに必要であるという、誤った主張に基づいているからである。 実際にはIWCで1986年から施行された捕獲枠ゼロの措置によって多くの鯨種が、数十年にわたる過剰捕獲や不十分な管理によって絶滅の瀬戸際まで追い詰められた状況から回復しているのである。 いいかえると、永久に行うとは意図されていなかった包括的禁止(訳注:資源量の大小に関わらず全ての鯨種を捕獲禁止にしたこと)が目的を達したのである。

いくつかの鯨の系統群が資源量豊富であるというデータに基づいて、ノルウェーは限定された捕獲量での商業捕鯨を1993年に再開し、アイスランドも2006年に同じ道を選んだ。 日本は調査捕鯨の口実のもとで毎年数百頭の鯨を捕獲することで、時代遅れのモラトリアムの制限に対処している。

これらの国々が何とも思っていない行動に関して彼らを困らせようとするよりは、1994年に過剰捕獲を避けるために設計された限定的な捕獲枠のシステムの実施をIWCにおいて推進する方が、オバマ政権にとってずっと建設的である。

もちろん、鯨の危機に対する懸念から捕鯨に対する抵抗は存在する。 多くの反対者は、鯨は知能が高く勇壮は生き物なので鯨を殺すのは本質的に悪であると信じている。 だが、そういう主張は国際外交の文脈においては扱うのが困難な事柄である。 厳密にいってどういう場合に、ある動物が食料にするには利口であり愛らしいと規定できるのだろうか? また、誰の価値観によってそれを決めるというのだろうか?

さらに、鯨を殺すこと自体が間違いであるというのなら、それには例外が無いはずである。 それはつまり、商業捕鯨だけでなく先住民による生存のために1986年に設定されて認められた捕鯨も禁止しなけらばならないことを意味する。 それらの中には、アメリカのエスキモーによってアラスカ沖で毎年60頭程度捕獲されているホッキョククジラも含まれる。 しかし、アメリカ内務省がそれらについて文句を言っているのを耳にすることはないはずである。

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