ベーコンと畝須(うねす)

昔、といっても30年余り前だが、単に「ベーコン」といえば鯨のベーコンを指していたように思う。 これは、鯨の脂肪分の多い畝須(うねす)や皮須(かわす)などを塩水や燻液などに数日漬け、その後にゆでたものである。 上の写真で左側がミンククジラのベーコン、右側がそのもととなる畝須をゆでたもので、ともにスライスしてある。 ベーコンの縁が赤いが、これは食紅で着色してあるためで、このように着色してあるものを「赤ベーコン」、無着色のものを「白ベーコン」と区別する場合もある。 畝須とは、鯨の体における場所としては、下あごから腹部にかけての縦すじがある部分の脂肪部分である。 牛や豚などの陸上動物とは違い、魚類と同様に、鯨の脂肪にはコレステロールを下げるリノール酸などの不飽和脂肪酸をはじめ、EPAやDHAなどの多価不飽和脂肪酸も多い。

特に捕鯨に縁のない地方にあった私の家では、何も付けずにそのまま食べていたが、醤油やポン酢におろしショウガやカラシをまぜたもの、あるいは酢味噌などに付ける食べのが割とポピュラーなようではある。 個人的には、ポン酢に浸すだけでも十分に美味しいと思う。

以前、初めて畝須を食べた際には、ゴムのような感じで硬いと書いたが、今回食べた畝須と比べると、3ミリ以上の厚さにスライスされていた上に、十分にボイルされていなかったのかもしれない。 ボイルして薄くスライスされたものを食べると、同程度の厚さのベーコンに比べて、特に食感上の違いもなく文句なしに美味しかった。

ベーコンには、畝須を用いたものと皮須を用いたものがあるが、個人的には今回のような赤身の多い畝須ベーコンの方が好きである。 ブロックで入手した際には、できるだけ薄く(1ミリ程度に)スライスした方が美味しいと思う。 捕鯨国であるノルウェーでも、肉は食べるが脂肪部分は食べないので、世界中でこのベーコンの旨さを楽しめるのは日本だけかと思われる。

(2004年1月3日 更新)

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