松浦漬け

鯨の松浦漬けといっても、ピンとこない人が多いと思う。 伝統的には九州北西部の捕鯨地での産物で、蕪(かぶら)骨という鯨の上あごの軟骨の粕漬けである。 缶詰のものを入手したが、開缶後の保存のためにプラスチックのフタが付いていたのは助かる。

骨の缶詰という事で、どんな味と食感なのか恐る恐る食べてみたら、「これはアレに似ている」というのが第一印象であった。 「アレ」というのはワサビの粕漬けで、要は粕が味のほとんどを占めている(言い換えれば軟骨は味が淡白?)のである。 むろん、ワサビの粕漬けと違って辛くはなく、代わりに軟骨の食感が加わる。

軟骨といっても、薄く細く削ったものなので柔らかく透明であり、「これはクラゲの粕漬けです」といって人に出したら、だまされない人は恐らくいないであろう。 誰にも違和感のない味で、朝ご飯のおかずにぴったりだと思う。 欲を言えば、粕に対する軟骨の割合がもうちょっと多ければ、という気もする。 「捕った鯨は無駄なく利用されていた」とはよく聞くが、骨までおいしく食べていたとは知らなかった、というのが率直な感想である。 特殊な食材なので、さすがに手元の食品成分表には載っていないのだが、軟骨であるから当然コラーゲンが豊富であろう。

(2000年8月19日 記)

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