(HNA(ハイ・ノース・アライアンス)発行 "The International Harpoon"(2001年7月)からの訳。
15-May-2002。
1997年のワシントン条約締約国会議で、当時IWC議長だったオーストラリア人のピーター・ブリッジウォーター(Peter Bridgewater)は、IWCの管理制度は「近い将来」に完成するだろうとの見通しを述べた。
3年後、次のワシントン条約締約国会議において、ブリッジウォーターの後任であるアイルランド人のマイケル・カニー(Michael Canny)議長は、ノルウェーがワシントン条約に対し、ブリッジウォーターの説明以後IWCでは何も進展が無かったと述べたのを非難した。
「あの声明には同意できない。
改訂管理制度の開発には実質的な進展があった。」と述べたのである。
「持続的な捕鯨を促進する」この制度は「完成に近づいている」と彼はワシントン条約締約国会議の場で断言した。
また、「唯一の主な未解決問題は検査・監視人制度の最終合意だ」とも主張した。
これはハッキリした言葉づかいだが、「唯一の未解決問題」が「持続的な捕鯨を再開させるための、最後の重要事項のひとつ」であると彼が言っていたことを認識していた各国代表団はほとんど無かったであろう。
彼は、他の重要項目については言及せず、ブリッジウォーターが楽観論を述べて以降は何も進展がないことにも触れなかった。
カニー自身は精力を注いだが、改訂管理制度完成への合意をまとめあげるのには全く失敗した。
事態は、IWC内部の解決不能な対立のために行き詰まっているのだ。
IWC加盟国の多くが商業捕鯨モラトリアムの解除に原則反対であると表明したことを伏せて、カニーはIWCが「持続的な捕鯨を進める」可能性というものについて、きちんとしたビジョンを伝えなかったのである。
これら反捕鯨国は、仮に改訂管理制度が出来上がっても(ありそうにもないが)、それが採択されないよう4分の1の票でブロックすることが可能である。
これら反捕鯨国もまた、ワシントン条約に加盟しているが、カニーの言明を修正させようとはしなかった。
IWCの場で反捕鯨国から喝采が起きる事柄はワシントン条約の場においては政治的に誤りとなる。
ワシントン条約では、ほとんどの国が討議内容に関して経済的利害を持っている。
アメリカは野生の毛皮の取引を支持したいし、イギリスは自国の鹿肉のオランダへの輸出を止められたくなく、また、オーストラリアは毎年300万頭駆除しているカンガルーの肉を輸出するために戦っている。
彼らは、豊富な生物種の取引を禁止しかねない、「大衆の意見」に基盤を置いた政策決定がワシントン条約の場でされたのでは困る。
だから、オーストラリアは、その環境大臣が「鯨を殺すのは正当化できない」と述べたような捕鯨に関する自身の本音を、決してワシントン条約では明かさないであろう。
また、イギリスとアメリカが、「大衆の意見」を反捕鯨の立場の根拠としているような事は、ワシントン条約の場では正当な議論とは見なされないであろう。
ワシントン条約では、絶滅の危険がない生物種は輸出入の規制対象にはならない。
また、他の関連する国際機関の保護策と協調をすることになっている。
IWCの議長ならば、ワシントン条約での鯨についての取り決めはIWCでの管理政策に沿っているか見届けるのが使命である。
だが、ある種が豊富か激減しているかに関わらず商業利用を全く拒否するような政策は真の保全とは無縁である。
IWCの南氷洋鯨類サンクチュアリーでは、「鯨の種の保全状態に関わらず」捕鯨を無期限に禁止している。
「ワシントン条約の加盟国は、まだIWCとの関係を保つことに価値を認めているが、ある程度までは、ということに過ぎない」とブリッジウォーターは1997年のワシントン条約締約国会議の模様をIWCで報告した。
「IWCは改訂管理制度をすぐに完成する必要があり、そうでなければ、ワシントン条約が根拠にしている科学的基盤がぐらつくという、はっきりした認識が根底にあるようだ」と彼は警告した。
ブリッジウォーターのアンテナは、昨年(2000年)の7月4日にワシントン条約の事務局長のウィレム・ウィンステカーズ(Willem W. Winjstekers)からIWC宛てに送られた書簡の言葉で再確認されたメッセージを敏感にキャッチしていたことになる。
ウィンステカーズは書簡において、ほとんどの鯨種が、絶滅に瀕した種だけをリストする付属書I(Appendix I)に載せられていることについて、「多くの鯨種については生物学的基準に矛盾している」と不満を訴えた。
文面では、このような状況がIWCからの不適切な助言の結果であるとほのめかされている。
「それゆえ、IWCが改定管理制度の採択に向けてすぐに事態を進展させることが重要である。
これができれば、ワシントン条約の加盟各国としても、条約の付属書への鯨の記載に関して、妥当な分類を採択できる」と強調している。
この書簡は多くのIWC加盟国の気にさわった。
その結果、議長の提案に反して、書簡をワシントン条約からIWC会議への公式の声明と見なさず、また、書簡をアデレードで開催されていたIWC会議に参加していたオブザーバーやマスコミに公開すべきでないと決定したのだった。
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原題:"IWC Chairs mislead CITES")
IWCの議長2人が過去2回のワシントン条約締約国会議で、IWCは間もなく商業捕鯨再開を認めるだろう、とか、捕鯨を持続的に行なうという目標に実際に着手するつもりだ、と述べたのは信じられるだろうか?
我々はみな、これらが事実に反するのは知っているから、IWCの議長は2人とも反捕鯨国の依頼のもとワシントン条約会議の各国代表に対して意図的に嘘を流していると主張できる。
だが、ワシントン条約側もこの手のニセ情報は聞き飽きているらしい・・・。
ありそうにもない
「ある程度までは」
「生物学的基準に矛盾」