ブロイラー、鯨、ブタ、化粧品 − 倫理的評価

(HNA(ハイ・ノース・アライアンス)発行 "The International Harpoon"からの訳。 24-Mar-2001。
原題:"Chicken Broilers, Whales, Pigs and Cosmetics: An ethical evaluation")




「スポーツ・ハンティングを認める一方で商業捕鯨を道徳的観点から非難するような論理は見いだしがたい」

「動物の屠殺はヨーロッパの動物福祉において重要関心事である」

これら2つは商業捕鯨における人道捕殺の問題についての、デンマークの哲学者ピーター・サンド(Peter Sande)のコメントである。 サンドはコペンハーゲン大学で教えるかたわら、デンマーク当局によってデンマーク動物倫理審議会(Danish Council of Animal Ethics)の議長に指名された。 審議会は、毛皮産業からペット確保の狩猟に至るまで、動物福祉に関するあらゆる問題を扱う。 サンドはこの場で彼の個人的見解を述べる。

サンドは、動物福祉の議論におけるパラドックスの1つを強調する。 「議論の焦点が動物の全生涯ではなく最後の10秒にあると、何か間違いが生じます。 動物の屠殺はヨーロッパの動物福祉において重要関心事です。」 彼は、虐殺に先立ってブタに麻酔をかけるためのCO2ガスの使用に関する議論に言及する。 議論はブタが意識を失う前の最後の10秒での極度に震える振る舞いが、痛みや苦痛を意味するかどうかに集中した。 サンドは、動物が生きる条件一般に対する関心のレベルと比較して、屠殺そのものへ不釣り合いに大きな関心が払われることは「深い文化的問題」を反映していると信じる。

彼は、平均3分強の致死時間へ短縮されたノルウェーのミンククジラ捕鯨の捕殺法の改良を、倫理上の進歩と見なす。 「これらはスポーツ・ハンティングと比較すると見事な数字です。 私の印象では、砲手への義務的なトレーニング・コースなど、捕殺の効率を改善する多くの労力があったようです。 また、撃たれて逃げた鯨の数は、他の形式の狩猟よりも少ないです。」

「奇怪で」、「不可解な」とは、陸上哺乳動物のレクリエーション・ハンティングよりも商業捕鯨により厳格な人道捕殺条件があるべきであるという英国の立場への、サンドの形容である。 彼の論拠は、人間の病気についての研究で動物に苦痛を伴う実験が認られている一方で、化粧品産業のための動物実験に強い批判的な反応があるEU内での動物試験の議論にある。 デンマークの世論調査は、デンマーク人もこれらの見解を持つことを示している。

化粧品はぜいたくと見なされている。 サンドは、同様な区別が、商業捕鯨と対照的なレクリエーション・ハンティングにも当てはまると信じる。 「スポーツ・ハンティングは生計上重要でない一娯楽です。 スポーツ・ハンティングは趣味ですが、コマーシャル・ハンティングは生計を提供するのです。」 しかし、彼はまた、商用と娯楽の狩猟を明確に区別するのが困難な場合もあることを指摘する。 多くの場合、地主はスポーツ・ハンターへのライセンスの販売から実質的な収入を得る。

ミンククジラ捕鯨の捕殺法を屠殺場の家畜の殺害のための標準と比較することは適切だというイギリスの立場の別の側面について、サンドは、屠殺に先立った全過程がさらに考慮に入れられなければこの比較が完全ではないと言う。 輸送や閉じ込めは多大なストレスおよび苦痛を動物に起こしうる。 「管理された条件下での屠殺場での処分は野生動物の狩猟よりも常に効率的でしょう」とサンドは強調する。 彼は、野生動物のいかなる殺害にも原則的に反対する団体に一定の理解は持っている。

デンマーク動物倫理審議会の報告書のうちの1つは、デンマークでのブロイラーの生産に関するものである。 デンマークのメディアの多くの注意を引いたレポートは、まず第一に、ブロイラーが生産される方法に強く批判的である。 妥協された成長期間は、生産方式における他のいくつかの要素と合わせることによって、鶏の脚に持続的な痛みを引き起こす。 骨格は加速された成長速度についていくことができない。 「全く承諾しがたいことです」とサンドは言う。 ブロイラー産業は今、状況を改善する手段を見いださねばならない。 しかし、報告書はさらに、屠殺の標準についても疑問を持つ。 「ブロイラーが脚で吊され気絶させられる前に、お互いあるいは設備に体がぶつかっている状況は、鶏の状態に対する無関心の表れです。 これは全く不要な事態で、たいした費用なしで是正できることです」とサンドは言う。

彼は動物福祉問題の解決において現実的な立場にある。 動物倫理審議会が他のEU諸国の競争者よりデンマークの生産者に著しく大きなコストを強いる手段をとった場合、生産者は生き残れなく、生産とそれに関わる問題は別の国に移るであろう。 「コストの大きな増加なしでできる解決策が沢山あります。 それは多くの場合、動物福祉および経済的考察の両方を考慮に入れた、新技術の開発です。 これは必ずしも矛盾することではありません。 しかし、各動物により多くのスペースを与えるというような、動物福祉を改善するための多くの手段は、コストを上げるでしょう」とサンドは言う。 このため、審議会の仕事の重要な部分はEUに方法を提案をする際にデンマーク当局に影響を及ぼすことである。

スウェーデンとノルウェーは、ブタの生産において、例えばデンマークよりも厳密な動物福祉条件を課している。 「私は、スウェーデンが、EU市場の競争で生き残れるなら、その標準を緩めることを強いられるだろうと思います。 これは非常に遺憾です」とサンドは言う。 彼は、EUおよび欧州議会によってこの分野で多くの重大な仕事が既に行われたことを指摘する一方、国内の家畜用の共同市場を持った国々で共通の動物福祉基準を作成する重要性を強調する。

サンドの国内の家畜生産についての意見は、ヨーロッパの動物福祉運動の主流にかなり沿っているが、狩猟に対する彼の立場はそれとは正反対のようである。 「私にとって最優先の要素は、動物に不必要な苦痛を与えないなら、人間のために動物を殺すことを認められる事を私が容認できるということです」とサンドは説明する。 放し飼いのブタや鶏の畜産を受け入れられるならノルウェーのミンククジラ捕鯨と同質の捕鯨することを受け入れるべきです。 鯨達はよりましな生涯を生きています。 最良のブタ生産においてでさえ、動物の自然な意思表示には制約があり、輸送と屠殺に関連した不快があります」とサンドは言う。

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