(ハイ・ノース・アライアンス発行 "International Harpoon"(2002年)からの素人訳。
08-Mar-2003。
鯨の食性の分析法について、「オーストラリアの科学者たちが鯨を殺すことなしに鯨の食性を分析する新たな手法を見つけた」とBBCのオンライン・ニュースは2月に報じた。
「新しい手法は、オーストラリアとアメリカの研究者がシロナガスクジラの糞を網ですくって編み出した。
鯨は糞を海面近くに薄い雲のように放出する」のだという。
この研究は部分的には成果があがっているが、たった一種の鯨だけの研究であるため、日本鯨類研究所の反応は「オーストラリアの研究者たちは反捕鯨の政治声明の目的のために自分たちの研究を発表した」というものであった。
この研究はBBCに対して、オーストラリア環境省の南極部門の研究者ニック・ゲイルズ博士らによって「明らかに」された。
ゲイルズ博士は「我々は国際捕鯨委員会に対し、これが鯨の研究における強力な非致死的手法であることを示すだろう」と言った。
「この方法は食物連鎖モデルに対しいくつかの点で実施的な情報を与えるだろう。
もしこの研究で鯨が魚類資源をめぐって人類と競合関係にあるとわかれば、我々は対応を
迫られることになろう」とも彼は言う。
なぜオーストラリアがこの「強力で非致死的な」手法を推進し、しかも、それを夜遅くになって発表したのかを見抜くのは、それほど頭の切れる人間でなくてもできる。
IWCに対してこの研究を紹介することは、ニュースに飢えているメディアにとっては重要なニュースとなり、そこには日本が行なっている致死的な調査捕鯨を攻撃する意図が見て取れる。
調査捕鯨では、鯨の食性の研究の必要性が、その基本的理由の一つだからである。
今になってこの研究が発表されたのは、日本の調査捕鯨を中傷する他の全ての試みが失敗したからである。
これらの中傷は全米人道協会によるくだらない宣伝から、最近のニュージーランドの科学者達による「日本の市場では絶滅に瀕した鯨種の肉が簡単に手に入る」といった毎年恒例の「暴露」にいたるまで多種多様である。
これらを見ていると、いいかげんあくびが出てくる。
メディアの記事の見出しの、さらに向こう側を調べる読者は、オーストラリアが紹介するこの「新しい」研究が実際には日本の研究の代替などにはなりえないことがわかるだろう。
ゲイルズ博士自身、BBCに対して、この研究がミンク鯨ではテストされておらず、日本の調査捕鯨の研究目的のいくつかを満たせないことを認めている。
調査捕鯨を実施している日本鯨類研究所の見解は、もっと具体的である。
「鯨の糞のDNA分析は、個々の鯨が何を食べているかという情報を与えるかもしれないが、どこでどれだけの量を食べているかという点のデータは提供しないから、鯨を殺して胃の内容物を調べる事も含めた今の調査の代替にはならない。
餌の量に関するデータというのはエコシステム・モデルにとって重要である。」
「日本の調査捕鯨の第一の目的はすべての海洋資源の管理の基本を改善するようなエコシステム・モデルの開発にある。
エコシステム・モデルでは、鯨の胃の内容物を直接調べて初めて得られるデータが必要となる。
鯨の糞のDNA分析では、鯨の重要な餌生物が見逃されたり、消費された餌の総量や、ある餌が食性全体においてどれだけ重要なのかを算出する基礎が得られない可能性が大きい。」
にもかかわらず、日本の調査と綿密に比較すれば、鯨の糞の研究にも利点はあるとゲイルズは言う。
「この手法は鯨を殺すよりは確実に時間がかからず、はるかに安上がりである」と彼はBBCに語った。
だが本当だろうか?
彼の研究は数頭のシロナガス鯨をカリフォルニア沖で追いかけるというものだった。
だが、南極海で鯨の糞を採取するために、オーストラリアの調査船団が数百頭のミンク鯨を追いかけるなんて事を期待できるだろうか?
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原題:"Desperate Times, Desperate Measures")
「新しい手法」は新しくも有効でもなかった
これは新発見なのだろうか?
全然そうではない。
シロナガスクジラの糞の分析は10年以上もカリフォルニアで行われてきているのだから、鯨の科学研究がまだ基礎段階にあるなどと思わないで欲しい。
政治目的
替わりにはならない
頑固な主張