(HNA(ハイ・ノース・アライアンス)発行 "The International Harpoon"(2001年7月)からの訳。
15-Dec-2001。
報告によると、ホエールウォッチングの利益は過大に誇張されてきており、トンガなど太平洋の小島国とそれらの社会は、ホエールウォッチングこそが進行しつつある彼らの貧困を救う答えだという外部からのアドバイスに忠実に従うことによって、大きな経済的なリスクに自らを追いやるだろうという。
論文の分析によると、ホエールウォッチング向きの海域外でホエールウォッチング事業を行なうと、操業域の拡張に伴う過当競争など、いくつかのリスクに見舞われるという。
また、ホエールウォッチング賛美者の分析においては、ホエールウォッチングに伴う環境や社会面でのコストがきちんと計算に入っていない。
研究によると、IFAW(国際動物福祉基金)が発行した「ホエールウォッチング2000: 世界におけるツアー数、消費、拡大しつつある社会経済的利益」(Erich Hoyt, 2000)において、不適当な分析手法によってホエールウォッチングがもたらす利益が水増しされているという。
ホエールウォッチング産業への投資を、コストではなく利益として用いることによって、数値を大きくしているというのである。
その一方、「捕鯨による利益は、市場での価格を価値の代用としたり、捕鯨自体の商業的価値とは別の、社会および文化的利益を無視することによって、一貫して実際より低く見積もられている。」と分析は言う。
研究によれば、経済的な多様性というものは、一般に社会的にはプラスになるもので、開発に伴う利潤や社会の持続性をもたらすという。
「それゆえ、鯨の価値が高く資源も豊富な地域において、鯨を利用する様々なオプションを客観的に評価するのは極めて理にかなったことである」と論文は続ける。
これには当然、豊富な鯨種を持続的に利用することも含まれている。
IFAWやHSUS(全米人道協会)、グリーンピースなどのいわゆる環境団体、そしてニュージーランドやオーストラリアなどの政府はホエールウォッチングが持続的な捕鯨よりも富をもたらすと一貫して言い続けてきた。
彼らは、ホエールウォッチングの利益が経済的再生の手段であるという神話を南太平洋の島国に押し付けている。
4月にサモアのアピアで開催された南太平洋地域環境計画の会議において、ニュージーランドとオーストラリア政府は南太平洋の島国にホエールウォッチングを捕鯨に取って代わるものとして受け入れ、南太平洋鯨類サンクチュアリー提案を支持するよう活発に働きかけた。
会議自体は、ニュージーランドとオーストラリアが去年のアデレードでのIWC会議で初めて出された南太平洋サンクチュアリー提案が採択されるよう、南太平洋の島国に支持してもらうことをしなかったため、付け足しになった。
IWCの場で、南太平洋諸国からの支持に疑問が持たれて初めて、ニュージーランドとオーストラリアは考え直し、彼らのイデオロギーに南太平洋の島国を誘う方法を考えたというわけである。
「ホエールウォッチングとそれがもたらす限りないの利益」というのは、これらの国々に送り込まれる「トロイの木馬」のようなものである。
今回の研究は、ホエールウォッチング派が彼らの勢力を推し進めるために、ホエールウォッチングの利益というものを誇張していることを示した。
明らかに言えることは、南太平洋の島国は、環境団体とそのサポーターであるいくつかの政府が持ちかけた「ホエールウォッチングは経済的困難を救う」という話には警戒し、額面どおりに受け取るべきではないということである。
世の中は、いつも「白か黒か」で片がつくわけではないのだ。
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原題:"Study Slums Whale Watching Benefits as False Economics")
最新の研究によると、ホエールウォッチングの経済利益というものが、かなり大げさに誇張されたものである事が明らかにされた。
「直接・間接的コストに留意した、ホエールウォッチングに関する生物経済的・社会経済的研究」("A Bioeconomic and SocioEconomic Analysis of Whale-Watching, With Attention Given to Associated Direct and Indirect Costs")と題する論文がカナダのアルバータ州立大学のマイク・エバンズ(Mike Evan)博士と、ニュージーランドのマッシー大学のブレンダン・モイル(Brendan Moyle)博士によって書かれ、IWCに提出された。