南極の鯨は誰のもの?

野生生物の持続的利用を支持するNGO「国際野生生物管理連盟(IWMC)」の2005年7月のニュースレターから
原題:"Whose Whales Are These?")




オーストラリア政府と多くのオーストラリア国民は最近、日本が南極海での調査捕鯨でナガス鯨を加え後にはザトウ鯨を加える計画に対して騒いでいる。 これはうわべ上の理由では、オーストラリアには彼らが繁栄していると称するホエールウォッチング産業があり、日本の調査捕鯨がウォッチングの対象となる鯨の頭数を減らして、巨大な生き物を眺める格好の場所との評判のオーストラリアの産業にダメージを与えかねないということにある。 数億ドルの利害が危機に瀕しているとか、その他にもいろいろ言っている。

オーストラリアは自身で南極海の鯨の調査を行ってきていないのは苦しいところである。 その上、日本の調査捕鯨を信頼していないと明言した手前、日本が行った鯨資源の調査データを利用するわけにもいかない。 オーストラリア人がホエールウォッチングのツーリズムの収入源として鯨に依存しながら、自身では鯨の資源状態の調査を何も行ってこなかったのは不名誉なことである。 オーストラリアは、日本が計画している調査がある程度進行した前後でナガス鯨やザトウ鯨がどの位残るのかを比較するための、厳密に非致死的な目視調査さえ行ってきていない。 オーストラリアが代りにやっていることといえば、単に自国の南部から南極の餌場へと回遊する鯨のウォッチングで利益を得ることだけである。 最近では、南極大陸の棚氷の溶解が進行して海水温が上昇し、オキアミ、ペンギン、アザラシ、鯨などの生息環境を変えていることが知られている。 これら環境の変化に影響を受ける魚類や鯨の状態について、オーストラリアが既に調査を始めているのを期待するのは理にかなっていることではないだろうか? だが、実際には南極海における鯨とその生態系について重要かつ論評の対象となる科学調査をしているのは日本だけなのである。 毎年、日本を含めて30カ国からの200人ほどの科学者が日本が蓄積したデータを検討し、IWCの科学委員会はミンク鯨の保存に対する日本の調査の妥当性と適合性について報告している。 日本の目視調査によって南極海におけるナガス鯨とザトウ鯨の急速な回復が明らかになった今、これらの種もミンク鯨と同様な厳密さで調査してデータがIWCの科学委員会へ提出されるべきであろう。

我々国際野生生物管理連盟としては日本が調査計画を堅持し、優れた科学者が適切だと思うレベルに拡大するのに拍手を送りたい。 そもそもなぜ理性のある個人や団体や国家の役人が、急激な変化を受けていると思われる環境での鯨や他の生物の調査に反対するのだろうか? 南極海で起きている海水温の上昇を無視していられるなど理解に苦しむ。 南極海の鯨は日本の鯨でもなければオーストラリアの鯨でもない。 それらは毎年の南極の夏に餌を求めて南下する生き物なのであり、一部はオーストラリアの領海を通過していく。 急激に変化している海洋環境に生息するこれらの鯨の資源状態が調査されるべきだというのは科学的な関心事である。 オーストラリアとその反捕鯨「仲良し国家」は科学的な調査捕鯨に対する立場を変え、調査捕鯨が大胆不敵な行動であるかのように反対する代りに何か有益な貢献をすべきである。

オーストラリア人よ目を覚ませ、今は21世紀なのだ。

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