(日本鯨類研究所 1996年 9月発行「鯨研通信」第 391号より)
大隅 清治
第48回 IWC年次会議の総会は英国スコットランドのアバディーン市郊外の、
見本市・会議センターで、1996年 6月 24日から 28日の間に開催された。
この総会の結果については、すでに多くの報道や報告がなされているので、ここでは、
その前の 5月30日から 6月17日まで行われた、科学小委員会(SC)関連会議について、
それらの会議に参加した私の、盛り沢山の検討議題の中から選んだ、いくつかの
トピックスについての印象を中心にして、報告したい。
SC関連会議はまず、5月30日から 6月4日まで、スターキス・ツリートップ・ホテルの
離れの建物の会議室で、2種の作業部会会議から開始された。
そのひとつが「北太平洋産ミンククジラに対する改訂管理方式(RMP)適用
シミュレーション試験」(議長:D.バターワース博士)であり、もうひとつが
原住民生存捕鯨管理方式の開発」(議長:L.ワロウ博士)であり、それらが
同時平行的に行われた。
次いで、6月5日から 17日までの間、会議場を上記のセンターに移して、一連の
SC会議が開催された。
SC会議には 20加盟国の代表、招待参加者、国際機関、IWC事務局を含めて、128人が
参加した。
商業捕鯨モラトリアムが可決された 1982年以来、SC年次会議参加者の数は毎年 90人
以上で、しかも年々徐々に増加する傾向さえあるのは、加盟各国の SCへの関心が
依然として強い表れであろう。
今年は米国が 27人を参加させ、昨年と同じく、最多数であった。
日本からは、畑中寛遠洋水産研究所長を団長として、4人の通訳者を含めて、22人が
参加した。
提出論文数は 188篇、報告 2篇、国の研究進捗報告 16篇、研究提案 l篇、その他
10篇であり、それ以外に情報用文書多数が配布された。
それらの文書数も年々増加しており、目を通すだけでも苦労した。
会議の前半は主として 5つの分科会の審議が同時平行的に進められ、後半は本会議を
主として、他にいくつかのグループ活動がなされた。
現在のような商業捕鯨のモラトリアム時代にあっては、SCで議論することもないように
思われがちであるが、かえって最近では、ホエールウォッチングや環境変動の鯨類資源
に及ぼす影響とか、新たな議題が加わり、多くの議題について中身の濃い討議が
なされて、最終日には報告書の審議が時間切れになってしまったほどである。
来年は IWC年次会議が、モナコで、変則的に 10月に開催されることが IWC本会議で
決定され、それにともなって、SC関連会議は 9月26日から 10月11日までの間、
英国ボーンマスのホテルで開催されることになった。
最近の日本の SC対応の最大の関心項目は、南極海と北西太平洋における
ミンククジラの捕獲調査である。
そして、それは捕獲調査の継続と発展の確保にある。
そのためには、これまでの調査について、質の高い解析結果をできるだけ多く
提出して、SC委員の調査への理解を得るとともに、すぐれた調査計面を提出して、
次の調査計面への支持を取り付けることが大切である。
日本は今回の SCに、南極海における捕獲調査(JARPA)に関して 4篇の調査資料の
解析結果と 1篇の調査計画を提出し、北西太平洋における捕獲調査(JARPN)に
関しては、9篇の調査資料の解析結果と 1篇の調査計画を提出した。
特に、今年の SC会議の直前に行われた、後で報告する、「北太平洋産ミンククジラに
対する RMP適用シミュレーション試験」作業部会は、JARPNに大きく関連するので、
日本はその準備にも最善を尽くし、上の他に 4篇の文書を提出した。
JARPAに関して反捕鯨勢力は、この調査にはすでに鯨類のサンクチュアリーが
設定されており、非致死的調査手段だけで調査がなされるべきこと、資源利用は禁止
されているので、将来の管理を目的とする捕獲調査は意味がないこと、生態系における
鯨類の果たす役割と環境変化の鯨類に及ぼす影響については、調査計画が目的に
合致するかを評価しにくいこと、海洋生物の汚染研究の対象としてミンククジラは
適当でないこと、などを指摘したが、それぞれに我が方から的確に反論した。
一方、米国委員からは採集標本数の検討に関して、日本の努力に対して謝意が
表された。
1996/97年度の JARPA調査は、これまでの捕獲調査の解析結果から、Ⅴ区の全域と
Ⅵ区の西半分の海域で実施され、標本数の限度として、普通型ミンククジラ 440頭の
採集が計画されている。
これまでのJARPAの調査の再吟味のための会合を持つことが、昨年の SC会議で
提案され、承認されたが、IWC総会で財政上の理由から 1年延期することになった。
今年の SCで再びこれが提案され、総会で承認されたので、来年 5月中旬に日本に
おいて会議をもつことになった。
召集者はノルウェイの T.シュエーダー博士に決定しており、日本はこの会議を
成功させ、捕獲調査を継続させるために、早急に十分な準備を整える必要がある。
JARPN調査は当初から綿密に計画され、2年の調査によってすでに素晴らしい成果が
上げられ、今年の SC直前の作業部会で結果について十分に検討されたので、SC委員の
理解が進んでおり、今年の SC会議に提出した、今年と来年の2年にわたる調査計画に
ついては、反対のコメントがなされずに、承認された。
IWC総会では JARPAとともに、捕獲調査の自粛決議が出されたが、日本政府は SCでの
前向きの論議を踏まえて、調査の許可を出し、7月初めに調査船団は出港し、9月中旬に
調査を終え帰港した。
今年 SCに提出された3つ目の捕獲調査計画は、ノルウェイからのものであった。
これは今年から 3年計画で、ノルウェイ沿岸の EC海区において系統群分離研究を
目的として、毎年 21頭のミンククジラを捕獲して、調査するという内容であった。
この計画案に対して、多くの質問や反対コメントが出されたが、ノルウェイは
SC会議の途中でこの調査計画を撤回することを通告した。
ノルウェイは商業捕鯨で捕獲する鯨体から必要な標本を採集できると判断したから、
計画を撤回したのであろう。
捕獲調査は条約第 8条を根拠にして、締約政府の固有の権利として、許可を与えること
は可能であるが、現在のように厳しい国際情勢の中では、よほど綿密で、科学的な
計画を作らないと、SCでの論議を通過できす、調査も実現できないことを、この論議に
参加して痛感した。
北西太平洋におけるミンククジラの包括的資源評価(CA)作業は 1991年に終了し、
1992年には RMPが採択されたので、次のステップとして、1993年にこの方式を適用
するためのシミュレーション試験を実施することになった。
もしもこの試験の結果捕獲枠が算出されれば、沿岸小型捕鯨の再開の科学的基礎が
固まることになる。
それを恐れた反捕鯨勢力は、試験のための作業部会で、日本の沿岸で捕獲枠が 0に
なるような海区設定のシナリオをデッチ上げた。
SCにおいては、1980年代にすでに、北西太平洋には日本海・黄海・東支那海系統群
(Jストック)とオホーツク海・西太平洋系統群(Oストック)の 2つの系統群が
存在することが認められ、CA作業においてもそれが再確認された。
それにも関わらす、RMP適用作業部会で、反捕鯨科学者は Oストックの東側に
東経 157度を境にして別の系統群(Wストック)が存在し、しかも、Jストックと
Oストックのそれぞれに複数の亜系統群(繁殖期を共有するが、索餌場が独立し、
独自の生活を営む)が存在するというシナリオを作り、北西太平洋に 13種の細かい
海区を線引きした。
これが正しいとすると、亜系統群ごとに資源管理をしなければならず、日本沿岸の
7区と 11区は海域が狭いので、そこに分布する現在資源量が少なく、捕獲の歴史が
長く、累積捕獲量が多いので、現在資源水準が低く計算され、捕獲粋が 0になって
しまう結果になる。
このようなシナリオはこれまでの生物学的常識から外れていたが、日本沿岸だけでしか
捕獲の資料がないので、シナリオのような可能性があるといわれれば、それを覆えす
具体的証明ができすに、押し切られた。
そこで日本は、このシナリオの不当性を証明することを目的にして、1994年から
捕獲調査を開始したのである。
そして、まず 9区で調査し、この海区に分布するミンククジラは日本の太平洋沿岸の
クジラと遺伝学、形態学、生態学のそれぞれの面から解析しても差異がなく、
Wストックは存在しないとの解析研究を纏めて、昨年の SC会議に報告した。
論議の結果、SCはシナリオを見直し、さらなる作業を行うために、今年の年次会議の
前に再び RMP適用作業部会を開催することに決定し、実行された。
日本はこの作業部会が、沿岸小型捕鯨の再開と、捕獲調査の継続に大きく関係する
ので、畑中団長を中心にして、14篇の研究論文を作成し、十分に理論武装をして会議に
臨んだ。
会議における真剣な論議によって、Oストックのなかの亜系統群の存在のシナリオは
否定された。
しかし、Wストックの存在については、日本の科学陣の豊富な解析結果が示されたにも
かかわらず、その可能性が一部の委員によって主張され、完全には否定されなかった。
そして、その証明は今後の捕獲調査を待つことになった。
とにかく 1993年のシナリオはこの会議によって大きく修正され、3つの系統群の
各海区における混合率を想定して、新たなシナリオが作成され、それに基づいて、
IWC事務局で計算作業を行うこととして会議が終了した。
事務局の計算結果が待たれるが、日本代表団の内部で概算したところ、日本沿岸で
200頭前後の捕獲枠が算出されるはずであり、この会議における日本代表団の努力に
よって、以前のデタラメなシナリオは潰され、捕鯨再開について、少なくとも科学的
基礎は築かれることになろう。
反捕鯨勢力のサボタージュに会いながらも、1990年から CA作業が主要鯨類資源に
ついて実施されてきた。
日本はかねてから北太平洋産ニタリクジラの CA作業の早期の実施を提案し、昨年
それがようやく実現し、2年かけて今年の SC会議で、念願の作業が終了した。
主力資源である西太平洋系統群の現在資源量は、g(0)=1としても、25,640頭と
推定され、最良の現在資源水準は MSYRが 4%として初期資源の 81%、最悪でも
51%と推定された。
CA作業を終了させ、西太平洋系統群について来年から RMPの適用のための
シミュレーション試験を実施するべきことが今年 SCによって勧告されたことは、
大きな成果とされるべきであろう。
早くこの試験を実施して、この資源の合理的利用の科学的根拠を築き、捕鯨の再開を
実現することが大切である。
今年のSCで、たいへんに印象的であったのは、北東大西洋産ミンククジラの資源量の
推定に関する論議であった。
ノルウェイは商業捕鯨のモラトリアムについて、異議の申し立てを続けており、
これを盾にして、1993年から沿岸でミンククジラを対象として捕鯨を再開している。
この資源の CAはすでに終了し、資源水準は良好であると診断されたので、すでに
完成した RMPを適用すれは、捕獲枠が算出されることになる。
IWCは改訂管理制度(RMS)が完成するまで、RMPによる捕獲枠の計算をさせないと決議
しているが、ノルウェイは RMPにより自主的に捕獲枠を算出している。
そして、捕獲枠の算出の基礎となるのが、現在資源量の推定であり、資源量の推定値が
多ければ、捕獲枠も大きくなる。
そこで反捕鯨勢力はノルウェイの捕獲を少しでも少なくするべく、現在資源量を
できるだけ少なく推定しようとして、1991年以来、北東大西洋産ミンククジラの
資源量の推定を巡って、反捕鯨科学陣とノルウェイ科学陣との間で、熾烈な論争が
繰り返して展開されてきた。
昨年の SC会議でノルウェイの出した資源量の計算ミスが指摘され、推定値に合意が
得られず、ノルウェイは反捕鯨の攻撃をかわすために、捕獲枠を削減せざるを
得なかった。
そこで、SCの中に、豪州の T.ポラチェック博士を議長とする資源量推定作業
グループ(AEWG)が設立され、1995年に国際共同による目視調査が大規模に
実施された。
その資料に基づいて、AEWGは活発な活動を行い、今年 2回の会合を持って、全員が
合意した報告書をまとめ上げた。
それによると、1995年の資源量は、118,300頭と推定され、ノルウェイ政府はこの
結果を基にして、1996年の捕獲枠を大幅に増加させた。
今年の SC会議にこの報告書が提出されたところ、AEWGのメンバーの一人で、
報告書の作成時に合意をしたはずの J.クック博士が、報告書完成から 2月も経った
後の、しかも SC会議の途中で、突如作業文書を提出し、報告書に同意できないことを
宣言したところから、会議は大揉めとなった。
この問題だけで、激烈な議論が l日、夜中まで延々数時間にわたって展開された。
その論議の経過については SC報告書に長いスペースを使って克明に記述されており、
ある人はそれを小説よりも面白いと評したが、反捕鯨勢力の卑劣な圧力に屈した一人の
科学者の悲哀と、科学的良心をもって毅然として理不尽な攻撃に立ち向かった多くの
科学者の勇気に感動した。
クック博士は報告書が作成された後、ノルウェイの捕鯨の発展に反対する
環境グループからつるし上げを食い、ついに心ならずもそれに屈して、ぎりぎりに
なってやむなく作業文書を作ったに違いない。
反捕鯨勢力の非情さを実感したと同時に、この卑劣な攻撃にたじろがなかった、AEWGの
他のメンバーを、科学者として敬服した。
彼らは豪州、米国、英国、南アフリカ、ノルウェイの科学者であり、ノルウェイの
メンバーを除いては、反捕鯨運動の強い国から参加しているのである。
また、AEWGのメンバー以外の多くの人も議論の中で積極的に発言し、報告書の内容を
支持していた。
これに対して、リーダーである S.ホルトは病気で SCを欠席していたし、
R.デラメア、K.ランカスター、E.スルーテンの 3人の札付きの反捕鯨科学者の
反論には論理性がなく、発言は弱々しかった。
この論争は最近の SCの正常化の具体的な現れであると、私は目頭が熱くなるのを
感じた。
今年の IWC年次会議に関連するジャーナリステイクな面からの関心事のひとつに、
米国のマカ族インデアンによるコククジラを対象にした捕鯨の復活要求と、ロシアの
チュクチ族のホッキョククジラの捕獲枠の要求とがあった。
SCでは、まず原住民生存捕鯨対象鯨類資源分科会で、これらの問題を科学的側面からの
審議を行い、SC本会議でも分科会の以下の報告を示認した。
マカ族が捕鯨の対象にしようとするコククジラはカリフォルニア系統群であり、
この資源の CAはすでに済み、その後も資源のモニタリングと資源解析作業を進めて
おり、1995/96年の資源量は 22,600頭と推定され、現在 2.5%の割合で増加しつつ
あり、資源は満限の 24,000−32,000頭に近づきつつあること、さらに置換生産量は
平均で 599頭であること、が今年の SC提出論文から推定された。
そして、IWCはこの資源に対して、140頭の捕獲枠を許可しており、ロシアは昨年 85頭
しか捕獲していないことから、マカ族の要求捕獲頭数の 5頭は資源に悪影響を与えない
と結論した。
次に、ホッキョククジラについては、チュクチ族の捕獲の対象としようとする資源は
ベーリング海−ビューフォート海系統群であり、この資源についても 1991年に CAが
実施され、その後も米国によって資源のモニタリングと資源解析が進められている。
今年の SC分科会においても、提出された 5篇の論文を基にして資源の検討がなされ、
最近の資源量は 8,200頭であり、毎年 75頭を捕獲しても、1995−98年の間に、資源量は
年間 1.46%の割合で増加すると推定されている、と記述した。
現在米国のアラスカ・イヌイットに対して、1995−98年間に合計 204頭
(年平均 51頭)の捕獲が許され、年間最大 68頭の攻撃数が許されていることから、
ロシアの要求している 5頭の捕獲は、米国の捕獲と合わせても 75頭の範囲であり、
科学的にはロシアの要求は認められることになる。
このように、SCは原住民生存捕鯨の新たな資源利用について、客観的な論議を
行ない、合理的な結論を出し、これも SCの正常化の表われであると評価される。
しかるに、反捕鯨勢力が絶対多数を占める IWCの総会においては、この SCの報告を
全く無視し、原住民の生活と文化を守ろうとする切実な希望を踏みにじって、許可を
与えずに終わった。
SCと総会との間に大きな離反があることが現在の IWCの実態であり、両者の距離は
最近ますます開きつつある.
IWCにおいて、SCの正常化が進むにつれて、鯨類資源の合理的利用の科学的根拠が
強化されつつある。
そのような状況に焦りを感じてか、反捕鯨勢力は最近、絶対多数を占めていることを
唯一の拠り所として、SCを無視した無謀な決議案を次々に提出し、それらを通過
させて、IWCの信頼性をますます失墜させている。
そのひとつが昨年の年次会議で成立した、「改訂管理制度の実施のための資源豊度
算定を目的とした調査に関する決議」である。
SCはすでに、RMSの一環として、目視調査のガイドラインを作っているにも
かかわらず、この決議は事前に SCでの議論を踏まえておらず、調査の監視の目的での
外国人の調査船への乗船の義務付けが盛り込まれるなど、決議の実行性は非現実的で
ある。
そのような決議を通過させて、SCに無理を強制する総会の破簾恥な行動には、心ある
SC委員は強い怒りを感じている。
しかし、総会は SCの上部機関であり、SCとしてはこの決議を無視すると、RMSが
完成しない。
そこで、今年の SC会議でも、管理方式分科会で、不本意ながらこの決議について
決議した。
そして、しばしの議論の末に、総会の決議は種々の面から実際的でなく、
科学的監視の見地からは、SCを代表する参加者は、国籍ではなく、科学的能力と
関連する経験に基づいて選ばれるべきであると SCは強く信じることを記録に
とどめることにした。
この結果も、現在の SCが良識をもって議論をするようになり、正常化が着々と進み、
IWCの総会はそれに対して、未だに、そして益々、余りにも常識はずれな決定が
なされている現実を一般の人が理解できる、例証のひとつである。
SCの議長は今年まで米国の S.ライリー博士が勤め、副議長は豪州の
J.L.バニスター氏であった。
今年は SC本会議の下に、管理方式(議長:P.ハモンド博士)、南半球産ヒゲクジラ類
(議長:J.L.バニスター氏)、原住民生存捕鯨開連資源(議長:L.ワロウ博士)、
北太平洋ニタリクジラ(議長:R.L.ブラウネル博士)、小型鯨類(議長:
A.R.マーチン博士)の 5つの分科会が設立され、その他に今年は、北太平洋産
ミンククジラに対する改訂管理方式適用シミュレーション試験作業部会(議長:
D.バターワース博士)と、ホエールウォッチング連絡グループ(議長:G.R.V.
アンダーソン氏)のそれぞれの議長と事務局長 R.ギャンベル博士及び SC書記官
G.P.ドノバン氏の 10人が運営委員会を構成し、毎朝及び必要に応じて会議を
持って、会議を運営した。
運営委員会はいわは SCの内閣に相当する、会議を指導する重要な機関であり、
会期以外にも、相互に連絡の機会が多く、これに集中する情報量は極めて多い。
今年の運営委員はノルウェイのワロウ博士の他は、全て英語国民で占められていた。
残念ながら日本からは、かって嶋津靖彦博士が北太平洋ヒゲクジラ類分科会議長を
勤めた例があるだけであり、今年も運営委員会に誰も参加していない。
IWCの公用語は英語だけであるので、日本から議長になる人は、語学の
ハンディキャップがあって、苦労するであろうし、日本代表団の戦力が殺がれるで
あろうが、運営委員会への参加は、それを補って余りあるメリットが期待できるで
あろう。
SCにおいて、日本の立場を有利に展開するためにも、積極的な選挙工作をして、
できるだけ早期に、分科会議長、さらには SC議長を日本から送り込むことが大切で
あると強く感じた。
今年は SC議長の改選期に当り、会議の最終日に選挙が行われた。
議長には慣習に従って、副議長のバニスター氏が選ばれ副議長には
米国ワシントン大学の J.E.ゼー博士が選出された。
博士は女性としての最初の SC副議長となる。
彼女は 1985年の第 37回年次会議以来 SC委員を勧め、会議で常に公正な発言を
積極的に続けており、多くの委員から高い評価と信頼を得ているので、すんなりと
選出された。
彼女の副議長としての今後の活用に大いに期待する。
そして、彼女はきっと SCの発展と IWCの正常化に貢献するであろうと信じる。
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日本鯨類研究所、理事長
会議の日程、参加者等
3つの捕獲調査計画
北太平洋産ミンククジラに対する RMP適用シミュレーション試験
北太平洋産ニタリクジラの包括的資源評価作業
北東大西洋産ミンククジラの資源量の推定
米国とロシアの原住民生存捕鯨の新たな捕獲枠の要求
目視調査の指針
議長と会議運営委員