IWC (国際捕鯨委員会)

International Whaling Commissionの略。 1946年に作られ1948年に発効した国際捕鯨取締条約(International Convention for the Regulation of Whaling − 略称 ICRW)に基づき捕鯨の管理を実施する機関。 その名称から国際連合の下部機関と誤解される可能性があるが、国連とは無関係である。 実際、日本は第2次世界大戦後、国連加盟より5年早くIWCに加盟している(条約起草時に、将来国連の機関にしたい意思があった事は条約文の第3条第6項に見てとれるが、実現はしていない)。 どんな国でもアメリカ政府に通告すれば、加盟国となる事ができ、脱退は1月1日までにアメリカ政府にその意思を通告すれば同年の6月末日をもって有効となる。

IWCとしての意思決定は本会議(Plenary)で決められるが、専門的な事項に関しては下部組織としての技術委員会(Technical Committee)、科学委員会(Scientific Committee)、財務運営委員会(Finance and Administration Committee)であらかじめ審議され助言や勧告を本会議に対して行う。 議長の任期は3年。 出版物の発行や会議開催の準備など事務一般は事務局(Secretariat)が行う。 また、IWCの運営に関し、財務運営委員会の範疇外にある事項に関して助言を与える諮問委員会(Advisory Committee)の設置が1997年に決められた。

反捕鯨団体などのNGOは1970年代終わりころから本会議場で傍聴できたが、報道機関の傍聴が議場で可能になったのはつい最近の1998年の第50回会議からで、それまでマスコミは議事が始まる前に会議場を出て別室で会議の模様をスピーカーで聞なければならなかった。 したがって長い年月、会議を直接傍聴していたNGOの発表は捕鯨に縁のない国のマスコミの記事に大きな影響を与えてきた。

条約には1946年に起草された本文の他に付表(英名 Schedule)と呼ばれる付属の部分がある。 捕獲頭数、捕鯨シーズン、鯨の系統群の定義、その他捕鯨に関わる細かい具体的な規定は付表に記述され、頻繁に修正されてきている。 商業捕鯨のモラトリアムやサンクチュアリーなども付表に記載される事項である。 この付表を修正するのは、本会議に参加して投票で棄権しなかった国の4分の3の多数決で可能である(加盟国の4分の3ではない)。 付表は条約の一部分であり、国際法上の拘束力がある。 一方、加盟国の意思表示である決議は、2分の1の多数決で可決されるが、こちらには法的拘束力がないのは、例えば国会決議(「法案の採択」と混同しないように)が法律でないのと同様である。

ただし、モラトリアムやサンクチュアリーの採択など、付表の修正に対して異議のある加盟国は異議申し立ての手続きをとる事によって、決定事項の適用の対象外となる。 例えば、1982年の商業捕鯨モラトリアムの決定の際、ノルウェーは異議申し立ての手続きをとったため、現在でも合法的に捕鯨をしている。 1994の南氷洋のサンクチュアリーの採択に際しても、日本は異議申し立ての手続きをとっている(モラトリアム決定の際にも異議申し立てを行ったが後年撤回している)。 この異議申し立てのメカニズムは、1946年の条約起草の際、アメリカの強い主張によって加えられた。

付表の修正に際しては条約第5条第2項により「科学的認定に基づいて」いる事が要請されるが、科学委員会の意見に無関係に単に本会議での多数決をもって採択されるケースが近年多い。 IWCには、意思決定手続きが条約に沿っているかどうかチェックして勧告するメカニズムはないので「条約無視、多数でやれば怖くない」というのが最近の実態である。

(2000年4月29日 更新)

_