「サハリンの灯は消えず」ザ・ジェノバ の裏にあった厳しい現実 - 歴史記憶の迷路を辿る ブログ・アーカイヴ

投稿日時:2013-09-04(11:20) | カテゴリー : 音楽

深く考える事もなく何気なく見聞きしたり、あるいは勝手な解釈したままでいたり、そういう事が割りとあるものだ。
特に思い込みというのは怖い物で、ちょっと立ち止まって考えたら矛盾があったりするのに調べもせずスルーしてしまったり。
そしてある時何かの切欠があって調べると驚く物が出てきたりする・・

と、大げさに書いてみたが自分の思い込みの馬鹿さに呆れた事があったので以下その話を。


1960年代、子供の頃「グループサウンズ」が流行り、少しマイナーなバンドの物まで好きになっていた。
その中で少し奇妙な歌詞ばかりのバンドがあった。
「サハリン」を題材にサハリン三部作とまで銘打って出していたザ・ジェノバ。




これが流行っていた子供の頃にサハリン=樺太であるとは分からず、何となく異国情緒を歌ったものなんだろうくらいに思っていた。後でサハリン=樺太であり南樺太がかつて日本だったことは知ったが。
そして歌のことも忘れ・・・

youtubeで昔の歌を彷徨っていてたまたま行き当たった歌が「サハリンの灯は消えず」。
あらためて歌詞を聴いてみると、これは故郷であった南樺太を捨てざるを得なかった歌じゃないか・・・

サハリンの灯は消えず 歌詞

作詞の北原じゅんを調べてみると
1929年(昭和4年)、当時日本領であった樺太(現在のロシア共和国サハリン)に生まれる。弟の正規はのちの歌手・城卓矢(菊地正夫)、作詞家・川内康範は叔父(叔母の元夫)にあたる。第二次世界大戦中に父が死去、引き揚げて室蘭市で育つ。

城卓矢「骨まで愛して」も作り、アニメ「まんが日本昔ばなし」の音楽担当もしている。「昔ばなし」は川内康範・監修でもある。
川内康範がまた凄い人物で
川内康範 wiki

こうして数珠繋ぎに色んな物が繋がってくるから面白い。

さてザ・ジェノバのサハリン三部作「サハリンの灯は消えず」「いとしいドーチカ」「さよならサハリン」
どれも樺太在住時のロシア女性との恋を描いているようだが、日本領であった南樺太でロシア女性?とここでまた疑問が。
そして調べてみるとこれまた凄い話が出てくる。

残留ロシア人(南樺太) wiki

あの横綱・大鵬の父親もその一人残留ロシア人だったとは知らなかった。
ロシア革命の赤化を嫌い日本本土へ亡命してきたロシア人(正確にはウクライナ人など)が菓子会社を作ったのは有名な話ではある。

歴史、事情を知らなければサハリンでのロシア女性との恋など荒唐無稽な異国・異国女性への単なる憧れだと思ってしまう。
知ってみればそこには厳しい世界情勢の激変が隠されていたりするから、何であれ勝手な想像での思い込みは避けねばならないと自分を戒める次第です。


追記:
南樺太の帰属については難しいものがある。
「日本政府は南樺太について「国際法上は所属未定地」としながらも領有権を放棄しており、積極的な領土的主張を行っていない」とあるが、日本が放棄したとしてもイコール、ロシア領土というわけではない

加えて北方四島返還を、と言われるが本来なら千島列島全土返還と言うべきだ
「領土不拡大」原則を真っ当に主張したのがかつての日本共産党のみだったという不可思議。
しかし四島以外は無理でしょうねえ。日本政府が諦めてしまっているから・・・。




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