「アンブロークン」・元捕虜と元看守の手紙 - 歴史記憶の迷路を辿る ブログ・アーカイヴ

投稿日時:2015-02-03(23:00) | カテゴリー : 「アンブロークン」関係

収容所 解放
(これは大森ではなくザンペリーニが最初に入れられた大船収容所・終戦で解放の時)


「アンブロークン」原作本・映画に関連して、捕虜収容所というのがどういうものであったか
それを知る手がかりの1つとなりそうな資料を。

ルイス・ザンペリーニが居た大森捕虜収容所の看守であった元軍曹・八藤雄一氏と元捕虜ロバート・マーチンデール氏 Robert R. Martindale の戦後50年経った頃の手紙やり取り記録がネット上に公開されています。

Letters between Mr. R. Martindale and 八藤雄一さん ←いきさつなど

マーティンデール氏と八藤雄一氏の手紙 ←書簡集へのリンク

(以下、私自身で訳させてもらいました)

1993年8月20日分 マーチンデール氏が出した手紙より抜粋

I had not seen or heard about the sentences given in the War Crimes traials until I received your letter.Personally,I believe many were too harsh : especially for Col.Suzuki and Col.Sakaba.Generally,I am not in favor of such trials as they can be so unfair,Perhaps they should only envolve the heads of government.

八藤さんからの手紙を受け取るまで、私は東京裁判の判決文を見聞きする事がありませんでした。
戦犯判決の多くは厳し過ぎるもので、特に鈴木大佐とサカバ大佐についてはそう思います。
大体において私はこんなに不当な裁判には賛成出来ません。
おそらく彼ら(戦犯とされた人達)は政府要人らの巻き添えになっただけです。


真ん中がその鈴木大佐
大森収容所 鈴木 クリックで拡大


I have not heard from Sam nor Nakajima-san in a very long time. In April,I sent each of them a copy of a book written by Frank Fujita, who was in Omori for a short time before being sent to Bunka(Propaganda Camp).As of now,I have not heard if they received the books. You may be interested in borrowing a book and reading it.

長らくサムや中島さんから音信はありません。
4月にはフランク・フジタ氏が書いた著書をお二人に送りました。フジタ氏は「文化収容所・プロパガンダのための収容所)に移送される前に短期間、大森キャンプに居た人です。
今の時点ではお二人がその本を受け取ったかどうか不明です。
八藤さんもその本に興味をお持ちと思います。


サムとフランク・フジタ(日系人?)が捕虜で「中村さん」は看守と思われます。

「文化収容所」というのは東京ローズで有名なラジオ放送を担当していた捕虜らが入っていた収容所で、ここに入れば厚遇されたらしい。
駿河台技術研究所(現お茶の水・文化学院)からの放送で、捕虜の為の宿舎が文化学院学校側にあったため「文化収容所」と呼ばれた。

wikiより

日本政府は大東亜戦争(太平洋戦争)中、「ラジオ・トウキョウ放送(現在のNHKワールド・ラジオ日本)」で、イギリス軍やアメリカ軍、オーストラリア軍をはじめとする連合国軍向けプロパガンダ放送を行っていた。捕虜から家族宛の手紙の紹介等をしていた


↓放送内容、捕虜の様子についてはこの本に詳しい。

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渡辺 考

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私自身この本を読んだが、1943年頃にはいかにもなプロパガンダ文を読んだりするものではなく捕虜の手に委ねられる形でかなり自由だったようだ。
プロパガンダにしてもコント寸劇の形にしてみたり、文面も捕虜らの工夫によって宣伝工作であると分かるものになっていた。

放送を担当した人達は捕虜と言ってもアナウンサーから音響、音楽などほぼ専門家の集団であり、「アンブロークン」ではザンペリーニがプロパガンダ文章を読むよう強要されて拒否したと書かれているが、放送の素人でしかないザンペリーニの出る幕など無さそうに思えるのだが・・・ (ランナーとして有名だったから利用されかけた、とされている)


捕虜に纏わるこのような細かい資料を見て行くと、日本人でさえイメージする事の無い捕虜収容所の意外な一面が見えてきて興味深い。

「アンブロークン」はそんな一面を取り上げないばかりか、総てを悪意ある構成に変更・偏向している。






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