「東京捕虜収容所の英兵記録」 その4--タチの悪い中国人や酔っ払い捕虜のこと - 歴史記憶の迷路を辿る ブログ・アーカイヴ

投稿日時:2013-09-20(11:15) | カテゴリー : 「アンブロークン」関係

「おかわいそうに 東京捕虜収容所の英兵記録」続きです。

香港で日本軍の捕虜となったルイス・ブッシュは、はじめ憲兵隊収容所に入れられたが次にスタンレー地区の一般民間人用キャンプに移送される。

「モリスのスポーツカー」での移動だった。
2000人ほど収容され、鉄条網で囲ってはあるが広大な敷地で丘あり道路あり海水浴の出来る海岸あり、先に書いたように学校、図書館、病院もある。
親日家でもあったので軍の捕虜とはならず日本人妻と再会できる可能性があるとして、日本側の好意で入れられたようだ。
キャンプ内の欧州人男の多くが中国女を妻としており、その妻らの多数が質悪く闇取引をやっていた。
前回書いたボッタクリ中国人にしろ、ヤクザにしろ、闇取引女にしろ、今と変わらない訳だ。
中国は昔も今も変わってない。
日本人も昔と同じ。


キャンプの食糧だけは質が悪く苦労があったが、差し入れは許されていた。
「愛憎絵巻」と称した項ではキャンプ内での男女痴話が繰り広げられる。
25歳男と60歳女の結婚だとか、捕虜となった軍人の夫がいるのにキャンプ内で他の男とデキてしまう人妻、四六時中顔を突き合わせる環境で破たんする夫婦・・
けれど笑いごとではない。
広くあろうが収容所ということで人間関係がおかしくなるのは問題には違いない。
が、それも現在の価値観で当時を同じに考えてもいけない。

一般キャンプでブッシュは軍人ととして居心地悪く軍用捕虜収容所へ移してくれと何度も要請する。
聞き入れられる事になるが移送の時に日本軍将校から「ビンタを張られ」てしまう。温情をかけたのにバカなやつという事でやられた訳だ。
ビンタ一発の後にはカレーライスをご馳走される。

日本軍人によるビンタは度々出てくる。
これは習慣として良いのか悪いのか判断が難しいが、前述のようなケースではブッシュは即刻意味を理解しているし有用な事もあっただろう。
他にも大森収容所で外部労働で酒をクスねた捕虜が、ある程度は黙認されていたのに限度超えて飲みまくりヘベレケに酔っ払って帰ってきた。
そこで監視兵がビンタを張るのだが、酔拳よろしくよろめいて当たらない。ここで双方大笑いしてお仕舞い。

限度超えた無軌道抑制のためのためのビンタ習慣であると思うのに、やはり悪用してしまう日本兵はいた。
その場合はたいていビンタだけでは済まない。よろけた所を蹴ったりする。
そういう侮蔑含むものは上記の例とは全く意味が違う。


軍人収容所へ移動させられる事になったブッシュは「脱走逃亡の場合には処刑される」ことを承諾サインせよと迫られ憤慨する。
欧米人にとって脱走とは義務であり誇りであると、価値観の違いに憤り、書いている文章も厳しい。

捕虜になるのは恥辱だ、捕虜になるくらいなら潔く死ね、と絶えず教え込む事は人間性を貶める事であり、卑劣な恐喝手段である。
その為どれだけ有為な日本人の生命が失われ、その家族が塗炭の苦しみを味わったか、計り知れないものがある。
何十万という立派な日本人が今日生きていられるものを、単に自分とその家族が汚名を蒙るという恐怖に駆られて、一個の狂信者と化して死を急いだのだ。



これは全くの民族間の齟齬でもあるし、一理もあると思うので難しい。
連合国西洋人に日本の価値観を強いるのは確かに問題があるし、かといって西洋人の側から日本のある種「美学」や「死して大義に生きる」意味を理解しようともせず単なる狂信者と断ずるのもおかしい。
けれど国際慣習=西欧列強の価値観=に合わさなければ後で要らぬ混乱を蒙ってしまう事を考慮する必要はあったと思う。
西欧という列強は列強として厳然とあったのを否定することは出来ない。
そこの処は日本は要領が悪かったと思う。




まだ続きます。
(持論が入り過ぎてなかなか先に進まないなあ・・・ちょっと反省)





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